**WHITE**


高校の頃の友達に、ミッキーマウスのマグカップをもらった。
あたしはミルクをたっぷり注ぐと、多めのはちみつを加える。 レンジで廻るミッキー達を見つめて、大きな咳を何度も何度もついた。



外は霧雨が舞っている。あたしは携帯を開くと押し慣れた番号を打つ。



「おかけになった電話は電波の届かない所におられるか、電源が入っていない為かかりません。こちらは○○です。おかけになった、、」


どうして、彼に電話をかけてるのに、いつもいつもこの人が出るんだろう。冷たいアナウンス。
どうして、いつも連絡取れないんだろう。
どうして、いつもあたしばかり、連絡を待っているんだろう。
肝心な答えだけ、見てみないフリして毎日を過ごしてみる。



あたしは、まだヌルいミルクを取り出すと、流しに捨てた。
レンジを力一杯閉めたら、レンジの上からコショウや砂糖の瓶が落ちた。
舞った粉は、湿気で床に張り付いた。





溜息と一緒に、咳がでた。
君はあたしに会いに来て、あたしに風邪を移して帰って行った。
大好きな彼の左手はあたしを離す事はなかったけれど、心はあたしのものではなかった。




いつまでも、君の裏切りを許せるはずも無く。
大切な時間に苛立って、君を好きだと思う気持ちがあたしを傷つける。
あたしは彼を心から愛している。同時に心から憎んでいた。



彼は、あたしが知らない間に帰って行った。
まだ、あたしは彼の心を取りかえしていない。



彼は、あたしだけのもの。
その約束は、この冷たい風に簡単に連れ去られて、あの子の手に落ちた。
そして君は、あたしと、あの子と、二人を傷つけた。
そして、君を、一番傷つけた。
あたしの大好きなあの大きな右手では、何も掴む事が出来なかった。
ただ一つ、自分の愚かさを突き付けられただけ。




あたしは今日も、ミルクを温めて、レンジを痛めつけては、キッチンにコショウを振りまくのだろうか。

←←back